吹雪手帖その87「2010年個展への道(8)」
吹雪手帖その87
「2010年個展への道(8)」


吹雪大樹写真展「豆腐とビール」の進捗状況は、
そろそろ佳境に・・・と言いたい所ですが、なんとまだ撮影続行中!
未スキャンのフィルムも相変わらずたくさん・・・
銀行の残高もこれぐらい貯まったらいいのにな!ガハハ!

ふぅ。。。

これから個展を目指すみなさんの参考にして頂こうと、
ワタクシ吹雪大樹が毎年5月に開く個展への足取りを、
アビィ日誌で連載している「個展への道」ですが、
いつも、スキャンだ、印刷だ、ハレパネだ、設営だと、
技術面や段取りの事ばっかり繰り返して書いていたので、
今年は「考え方」のことに重点を置いて執筆しております。

さて、今回は・・・といっても
いまはひたすら撮影を続けているところなので
これといって新展開もないのですが、
では、なんでひたすら撮っているのか?というところを
僕が写真を撮る時の考え方も含めて、お話しをします。

子供の頃から映画好きで、お話しを考えるのが得意だった僕は、
高校生になると見よう見まねで8ミリフィルムで映画を作り始めました。
これが僕にとっての表現活動の始まりです。

その後、映画学校に進学して、演出と脚本を勉強し、
映像業界に就職したのですが・・・
その頃の専門学校って就職率アップが優先ですから、
今のように本人の希望で就職をさせてもらえない時代。
入った会社は映像制作会社といっても、スポーツ中継専門の会社で、
僕は生中継のカメラマンになってしまったので、さあ大変!
やりたかったドラマづくりの仕事とは真逆の分野なのです。

しかもその生中継の仕事がやたら忙しく、
仲間と予定を合わせて趣味で映画を作る事すらままならず、
集団芸術である映画製作の活動続行を断念しました。

そして今後、何の分野で表現活動をすれば良いかと悩んでいる時に、
かつて夢中になった8ミリ映画のようなビジュアルで撮影できる、
ホルガやロモといったトイカメラという写真の世界を知り、
「映画の代わりに写真を撮る」というスタイルになったのです。

ですので「何をどう写真に撮るか」ではなく、
「写真に撮った物をこうしたい」という目的があって始めたわけです。
そのへんが、ちょっと普通と違うポイントかもしれません。

ちなみに集団芸術である映画製作には多くのスタッフが係わります。
監督や脚本、撮影、照明はもちろんのこと、
小道具、大道具、メイクアップ、弁当係、録音といったことから、
キャストとしていろいろな俳優さんも呼ばなくてはなりません。
大勢が集まっていろいろな細かい作業を経て映画が完成するのです。

というわけで、僕が写真を始めた時はこういう状態でした。

監督・撮影=僕

当たり前ですがほかのスタッフもキャストもいません。
これでは、映画は作れません。そこで、こう考えました。

監督・撮影=僕
脚本=目の前の世界で起こる出来事
ロケ地=いま僕がいる場所
キャスト=そこいらにいる人

こんな感じで、僕は写真を撮るとき、
僕の眼に見える事のすべてのことを
なんらかのドラマの一部だと解釈して眺めています。

ですから、街角も自宅も空も海も、
全部、映画のセットということになって、
そこにいる人は全員俳優さんです。
家族も友人も知っている人も知らない人も、
何かのドラマの登場人物として撮ります。

ただ、撮影するために誰かがあらかじめ、
ロケ場所の作り込みやキャストをセットアップはしてくれません。

そこに赤い服を着た人が歩いている・・・
どこかのスタイリストのコーディネイトです。

壊れた自転車が放置されて雑草が絡みついている・・・
小道具さんと大道具さんが用意したんでしょう。

開いたカーテンの隙間からまぶしい朝日が射し込んでいる・・・
照明さんがそういうセッティングをしたのかな?

そんなふうに、僕の目に見える世の中の事象が
僕以外の映画のスタッフが用意したものだと思って眺めつつ、
そこから自分の撮影したいシーンを見つけたり探したりします。
ようするに、前後にストーリーを感じる瞬間の風景を狙うという事です。

また、自分からセットアップすることはほとんどありません。
もしもそうしてしまうなら、映画の代わりに写真をやっている意味が
なくなってしまうように感じています。

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今回の連載で繰り返し書いている言葉ですが、
これが僕にとっての「日常で撮る」という意味なのです。
日常風景を日常風景と思って撮ってはいないわけです。

僕が作っているものは写真ですし、出来上がる物も写真です。
そこに写ったものは現実の世界に間違いなく存在しているものですが、
僕は現実を撮ろうとは思わずに撮っているのです。
撮れば、それは全部フィクションの一部になる、ということなのです。
(記念写真以外は、笑)

映像でドラマ製作をする時なら、当たり前の話しなのですが
素直に写真を撮っている人からすると、ちょっとヘンな感覚ですよね。
でも、実際の世の中の出来事も、いろんな人の行動がトリガーになって、
知らず知らずに演じられている群衆劇のような気がしませんか?

そういうつもりで僕の作品をご覧頂くと、
今までと違った面白さを多くの方に知ってもらえると思います。

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これらのことは、写真の見方に慣れている方には
あらためて説明するまでもない要素だと思いますが、
写真をそういう風に見たり撮ったりしてもいいんだよ、と
多くの一般の方にも気づいてもらう事が、
写真が表現として理解されることの底上げになると感じます。

小難しい事をいろいろ書いてしまいましたが、カンタンに言うと、

・写真に撮ったら僕はウソにしてしまう
・前後にストーリーを感じる瞬間を逃さずに撮る

このシンプルな2つのルールを核にして、
「映画を作っているつもりで写真を撮る」ということを続けているわけです。

と、個展の準備で慌ただしい中なのですが、
来週、ちょっとした旅行に出る事になりました。
今まで、旅行の時にホルガで作品を撮るようなことを
あえて避けていたのですが、今回の個展は旅行の写真も展示します。

厳密に言うと、旅行の写真ではなくて、
旅行先という設定で眺めた旅行先を舞台にした日常の写真、ですね(笑)
ストーリーを感じさせてくれる風景に
いくつ出会って、いくつ気づいて、いくつ撮れるか、楽しみです。

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写真を撮る事がますます面白くなってきました。
Date : 2010/03/27 Sat
吹雪手帖 > 2010年個展への道
感性が出会う、シャッフル展
まずは前開催「2コマ写真展」が日曜日で無事に終了致しました。
ご来場頂いたみなさま、ありがとうございます〜

ストーリーや繋がりが判り易い物が好まれるパターン、
2枚の組み合わせから何かを感じ取るほうが好まれるパターン、
観る人によっていろいろなケースがありました。

様々な写真の見せ方が入り乱れる現在の状況において、
「写真を組む」というごくごく基本的なことを
改めて知ってもらったり、ちゃんと考えてもらったりする、
実にいい機会になったのではないかと思います。

また、一般公募による作品募集というスタイルの面白さが
とても面白く表れた展示空間だったと思います。

全員で打ち合わせしたり、ひとりの人が作品をあつめたり、
そういうことによって同じベクトルに偏ったり、
引っ張られたりしない感じが、まさに多様性ということで、
アビィというギャラリーの面白さの1つになっているのだと感じます。

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さて、本日からは「SHUFFLE展vol.2」が始まります。

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テーマ自由・展示面積は壁半分or壁1面!
大きな壁に好きな作品をやりたいだけ展示してみようというコンセプト。

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いつもの企画展と個展の中間を担う役割がある展覧会です。
昨年のシャッフル展参加者からは3名の作家さんが個展を開きました。

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2回目となる今回は、関東から3名、関西から4名の合計7名で
普通だったら出会わないような距離感の人たちが集まりました。

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展示作品も、写真・絵画・ちょこっと立体、という感じで、
作品ジャンルも見事にシャッフルという具合。
まさに感性と感性がぶつかるシャッフル展!

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募集があって、たまたま集まった人たちがグループ展をして
なにかの化学反応がおこる・・・一般公募の面白いトコですね。

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そして、全員が打ち合わせはいっさいしていないというのに、
しかも、ジャンルも扱うモチーフも全員バラバラだというのに、
普通のグループ展であるかのような統一感のある展示風景なのです。

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やがて開くであろう個展を意識している作家さんのヤル気が
今年も不思議な調和とともに、アビィの壁面を彩っております!

日曜日までの開催です。
お見逃しなく!
Date : 2010/03/23 Tue
展覧会のこと
なんば経済新聞に「2コマ展」掲載
地域密着で街のいろいろなニュースを配信するなんば経済新聞様に
「2コマ写真展」の紹介記事を掲載いただきました〜!

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Yahoo!ニュースのほうでも配信されております!

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今回の展示は、いっけん判り易いテーマのようで、
実は写真表現の根本に取り組む内容であるため、
詳しく書いていくと、一般の読者の方へは
難解な内容になってしまいがちなのですが、
とても判り易く、表現とその方法の考え方を記事にして頂きました。

いつも取材いただきまして、ありがとうございます〜!
Date : 2010/03/20 Sat
展覧会のこと
吹雪手帖その86「2010年個展への道(7)」
吹雪手帖その86
「2010年個展への道(7)」

吹雪大樹写真展「豆腐とビール」の搬入は5月2日・・・
そう思うとまだまだ余裕がありそうですが
あと7週間とかって言われたら焦りますよね。
ええ、焦ってますとも(笑)

例年なら2月の終わりか3月の初め頃には撮影が終わってます。
しかし今回はまだ撮影が続いています(汗)

昨年の12月23日に撮影したあたりからが
自分の中で個展に向けてのスタートになって、
それ以降にホルガで撮影したフィルムは現在43本・・・

フィルムのストックはあと20本ほどあるので
これを撮り切ったら終わりにするか、まだやるのか、
あるいはそろそろ切り上げるのか・・・

けれど、僕の制作スタイルは「日常で撮る」ことですので、
はっきり言うと、いつになったらやめるとか、そういうことではなくて、
僕が生きている限りは常に撮り続けなければならないのです。

僕も含めて、「日常写真」に取り組んでいる人は
とても多いのではないかと思います。
むしろ、今や最もポピュラーなテーマではないでしょうか。

しかし「日常写真」という言葉そのままの積み重ねでは
「何を撮ればいいのか判らない」という迷路にやがて入り込み、
道を見失って写真の面白さを忘れてしまうことになるでしょう。

日常の積み重ねで撮った写真が、
人の心に残り、そして心を動かすには、
作者が、観る人に伝えたい想いや考えを
その写真の中にしっかりと含ませていること・・・
あるいは並べた写真全体でそれを物語ること・・・
とにかく気持ちを込めていることが大事だと思います。
(そこに込めた意味のすべてが言語に置き換えられなくてもいいから)

それがちゃんと備わってさえいれば、
国や文化や言語の違いを超えて、
人々に共感される作品になるはずです。

・・・大それたハナシになってしまいました(笑)

撮っている物は日常の風景ですが、
伝えたいことはその先にある・・・
まずはそこから考え方を変えていきましょう。

話しは変わりますが、美術館とかに行きますと、
100年も200年も前の絵画や陶器が展示されていて、
中には誰が何のために、どんな想いで作ったのか、
それすら不明になってしまった作品も多くあります。

しかし、ワケが判らないからといって捨てられもせず、
人間の一生の何倍もの時間、つまり、何世代もの人々が、
その作品を残すために受け継いでいって、いまに存在しているのです。

作者が生きている間は自身の言葉を使って
詳しい事を他人に伝えることができますが、
作者が死に、時代が変わり、観る人々の価値観も変わって、
そこに込めた本当の意味が失われてしまったとしても、
後世の人がそこに新しい魅力を見いだし、
再び輝き続ける作品は素晴らしいと思います。

写真は現在のスタイルが発明されてまだ100年少々。
印画紙の保存性にはいろいろな難しい問題があり、
特にカラー写真が美しさを保てるのはさほど長い時間ではなく、
語り継がれる芸術作品になりえるかどうか、といったところです。

しかし、何百年も前の絵画が、
何世代もの人の手を経て残されて行くように、
デジタルデータ化された写真が、その時代に合わせた記録メディアに
バックアップされ続けていれば、品質劣化のないまま
後世に残すことが可能だと思うのです。

昨日、僕がフィルムスキャンしたホルガの写真が
何十年、何百年後かの展覧会で、新しくプリントされて飾られる・・・
それは僕の家のベランダから見える風景だったり、
朝日が射し込むレースのカーテンの影だったり・・・
それが何を意味するのか、その時代の人にはもはや不明でも、
何かの想いを込めて撮った写真であることさえが伝われば、
僕という存在がすでに死滅していても、僕は生き続けていることになる。

そういう作品を僕はつくっていきたいのです。
僕自身の日常の中から、そう感じてもらえる物を
ずっと探し出し続けていたいのです。

さっきよりもさらに大それたハナシになってすみません(笑)
が、そういうことなんだと思うんです。

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1枚1枚、今日も明日もあさっても、大切に撮り続けたいですね。
Date : 2010/03/18 Thu
吹雪手帖 > 2010年個展への道
組み写真の最小単位
まずは前開催「でかフォト展」が日曜日で無事に終了いたしました。
会期中、たくさんのご来場を頂きありがとうございます。
連日、かなり混雑する時間帯もあり、
ご迷惑をおかけした方には、お詫び申し上げます。

見たこともないような大型サイズ!という声を多くいただきました。
普段、小さなサイズのプリント、もしくはデジカメの液晶画面でしか
写真を見ていなかったことに気づいた方も多かったです。

大きさを自由に変えられるのが写真・・・
その見落としがちな事実は、
作品づくりをするにあたってとても大事なことです。

搬出時には、集まった出展作家の皆さんで、
今回の展示した写真を大きくしてみようと思った理由を議題に、
作家トークの時間も設けまして、
いろいろなお話しを伺うことができました。

たいへん好評な企画でしたので、
できれば秋に第2回目を開催したいと考えています。
参加希望の方は新企画展の発表を
毎週チェックしておいてくださいね!

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さて、本日からは新企画「2コマ写真展」が始まります。
アビィの企画展であなたは何枚の写真を展示したいですか?
1枚?2枚?もっとたくさん?

1枚モノの展示は迫力があります。判りやすさもあります。
アビィの企画展ですと、展示面積イッパイまで大きくすれば
壁の中で目立ちますから作者も見る人も楽しめる写真です。

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では、個展をするとき、あなたは何枚の写真を展示しますか?
1枚だけで・・・なんてことないですよね。

1枚の写真の中で表現を完結させるのも技術ですが、
作者の世界観をより深く観客へ伝えるためには
写真を組んで表現する技術を欠かすことはできません。
いつかは個展を・・・と思っている人は、
組み写真について考えておくことが大事です。

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この企画では、組写真の最小単位である「2枚」で
様々なことを表現してみようというコンセプトのもと、
10名の作家さんから作品があつまりました。
ひとりあたり1〜4つの作品を展示しています。

時間の流れや空間の広がり、小さなストーリー、
そういったことが明確に表されているものもあれば、
2枚の写真から観客が答えを感じるべきものまで、
いろいろなパターンの作品が揃いました。

もし自分が2枚で組むなら、どんな写真を合わせるだろうか・・
そんなことを考えながらご覧頂くと、楽しいと思います。

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日曜日までの開催です。
みなさまのご来場をお待ちしております。
Date : 2010/03/16 Tue
展覧会のこと