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吹雪手帖その102「2011年個展への道(3)」
Date : 2011/02/16 Wed

吹雪手帖その102
「2011年個展への道(3)」

吹雪大樹写真展「ユージュアル_エブリデイ」の進捗は、
現在もなお撮影とスキャンを続行中。。。

 >撮影したフィルム:125本(2000カット)
 >スキャンしたネガ:112本

普通の人ならデジカメでも1年かかって撮らない枚数に(笑)
もちろんまだまだ増えます(汗)

今までの個展と今回が大きく違うところは、
いままでやらなかった「645判・横位置」で撮っているということです。

20110216-1.jpg

2006年の個展「素晴らしき世界」から
僕はホルガのスタンダードである6x6判をやめて
645判縦位置での制作に専念しています。

645判で撮る理由は書き始めると長いのですが、
いちばんの目的は「ホルガ特有のノスタルジック感の軽減」です。

ホルガレンズの特長である周辺のボケ・流れ・ケラレが
6x6判だと顕著に現れすぎるのがイヤで、
645判にして両サイドを削ってしまおうということなのです。

「じゃあ、なんでホルガを使うの?」ということなんですが、
ホルガ写真に共通した「なにか懐かしい感じ」という
一方通行なイメージを自分の作品から拭い去るための方法なんです。

もちろん645判にしてもけっこうレンズの特長が残ります。

でも、ホルガの645判はカメラを正位置で構えると、
(多くの中判カメラがそうであるように)縦位置の写真になります。

人間の眼というのは左右の方向には注意がいきやすいですが
上下の方向にはさほどそれが働きません。

そのため、ホルガレンズの特長ばかりが目立つことなく、
しかし隠し味的に、後から効くボディブロー的に、
ホルガであることが必要である写真になります。

もちろんこれまでも645判の横位置で撮った事もありますが、
左右に現れる「ノスタルジック感」が気になって全部ボツ。
縦位置の写真と雰囲気や空気感が合わないんですよね。

そういった理由で昨年の個展では横位置の質問があっても
「それはやらない」と言っていたのですが、この変わり様(笑)

実は今までさんざん縦位置で作品を発表していてナンですが、
僕、元は映像制作の人間なのでホントは縦位置が苦手なんです。
当たり前ですがテレビや映画は横位置ばっかり(笑)
横位置の世界で基礎を考えてきたので縦はどうも・・・なんです。

映画は作者が決めた時間ごとに1つ1つのカットが流れ去ります。
1つのカットの中で注視させたいものは多く盛り込めない。
その代わりに、次々とカットを変えて観客に判断させます。

しかし映画のようにたくさんのカットを
写真集や写真展で使うわけにはいかないし、
そもそも写真を見る時間軸は観客が決めることなのです。
10枚を10秒間で見てもいいし、10分間で見てもいい。

なので、縦位置よりも断定感の薄い、
客観的に見てもらえる横位置の世界で、
観る人の思考をじっくりと張り巡らせてもらえたら・・・

そういう画作りを心がけ、構図にも注意し、
左右に現れるボケや流れに気よつけつつ。。。

ノスタルジックに丸々おんぶされた写真を撮らぬよう注意して
日々作品撮影に励んでおります。

懐かしい雰囲気の写真を撮りたいとか、
ホルガの効果で現在を過去のように見せたいとか、
もう僕はそういうことがしたいんじゃなくて、
ホルガで今の自分が生きている事を撮って、
そこから自分のストーリーを表したい。

もちろん、どう感じるかは観る人が決めることであるわけですが。
実際、去年までの作品と、表面的な見た目はそんなに変わらないかもしれない。
けど、僕はそう思って作りたいな、、、と。

20110216-2.jpg

撮影は続行中ですが、セレクトとレタッチも並行して進めています。
去年の秋に、僕の身に降り掛かった災いのような事も
「ユージュアル_エブリデイ」の世界に影響を与えた気がします。

そのあたりは次回にでも。。。
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