森田直 写真展
「羅針盤」
2014年11月26日(水)〜11月30日(日) / 12:00〜19:30

これまで電車を使った二日間ほどの旅を、春夏冬に約一回くらいの割合で行っていた。車窓をぼうっと眺めて、気になる場所が見えたらふらっと降りる。わけもない鬱屈とした日々、諦念を感じる未来、集団や社会性の中にある不安と違和、それらを自分の写真の可能性という理由を盾にひた隠しにしながら、表面的で明確な孤立を作るために旅に執着していた。人との出会いなど全く求めていなかった。街の暖かさなどもいらなかった。物寂しく、わびしいほど、自分がそこに溶け込んだようでそのまま死んでしまいたくなるが、しかしもう一方で一瞬だけ心が安らぐのだ。

そしてそういった時に決まって子供の頃の目線を思い出す。夕刻の橙色や淡い残光が郷愁を生み、車窓の速度が過ぎ去った思い出の時間と重なって切なくなる。無意味なことかもしれないが、それが自分の旅にとって一番大切だった。

しかし、次第にその電車の旅では満足いかなくなっていった。もっともっと長い時間旅に出て、いつも電車で繋ぐ町と町を己の目で確認し、好きなだけ、好きなものをフィルムに収めたくなった。

子供の時、冒険にあこがれていた。その時間を追うように、戻らない旅に出た親友を探すように、六〇リットルのザックを持って、荒野に出たのだ。


●展示写真について
モノクロプリント(暗室手焼き)大四切サイズ40枚を展示予定。撮影は全てフィルム一眼レフカメラ。プリントはバライタ紙を使用。


●作者プロフィール
森田 直(もりたすなお)

1985年兵庫県生まれ・男性/兵庫県在住/今回初個展
10年前から写真を撮り始め、ラボやコンピュータを介さず現像やプリントを全て自分で操作できるモノクロ写真に魅せられる。電車での旅を繰り返すうち、長期間の放浪の旅に興味を持ち、2010年4月〜10月まで今回の個展の題材となる徒歩での旅に出る。(この後、2013年には自転車での約八ヶ月間に渡る日本縦断旅行も敢行)

(会場風景)