●個展開催にあたって
この展覧会の作品(A4サイズ20枚予定)はすべてデジタルトイカメラ「VQ1015ENTRY」で撮影した。このカメラはいまどきたった130万画素、マッチ箱サイズで液晶画面さえ無く、シャッタータイミングも不明というシロモノだ。
撮影時は大まかな構図を決める事以外は一切コントロール出来ないうえに、撮れば撮ったでこちらの意思とはお構いなく色や光が極端に飽和した、想像外の画像を出してくる。
普通なら失敗作として片付けるはずのそんな写真が、何故か自分の心を捉えて離さない。VQで撮る時の、カメラを向けてシャッターを押すだけ、という極めてシンプルな動作が、かえって気持ちを素直にさせるからだろうか…単なる色や光の面白さだけではない、自分自身の内側にある何かも一緒に写り込んでいるように感じる。
今回の個展はそんなVQ写真を「色(シキ)」というテーマでまとめてみることにした。色(シキ)とは、一般的には赤や青などといった色(イロ)の意味や、欲情の意味の他、仏教においては感覚や情念の世界、形あるものを指し、VQ写真を表すのにピッタリの言葉だと思う。それは、colorとしての色(シキ)であり、欲望や情念としての色(シキ)であり、これらひっくるめた、“色(シキ)の世界”という意味を今回のタイトルに込めた。
(注)仏教用語における「色界」という言葉の本来の定義は、三界(欲界、色界、無色界)の一つで”欲望は無いがまだ物質を離れていない世界”という意味であり、今展タイトルの「色界」は定義を異にする。
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